リュックの見直し2
「肩の負担を軽くするリュックサック」に新しい形が仲間入りします。
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衣服雑貨
STEP1.プロジェクトの始まり
2017年に「リュックの見直し」プロジェクトから生まれた「肩の負担を軽くするリュックサック」は、2018年に特許登録となった技術を使った無印良品オリジナルのリュックサックです。
お客さまからも「肩の負担がほとんどなく快適です。」「たくさん荷物を入れても楽なので、買い物の際に重宝しています。」「やっぱりこれです。何個もリュックを持っているのに、いつもこのリュックばかり使ってしまいます。」などの嬉しい声をたくさんいただいています。
それでは、「肩の負担を軽くするリュックサック」の秘密である肩紐の構造についておさらいしましょう。
肩紐のポイント
芯材の厚み
背負った時に肩紐が内側も外側も肩から浮かないよう、外側に厚みを追加しました。
荷物が重くなるほど肩紐の内側に集中していた荷重が肩紐の内側と外側で分散できるようになりました。
厚みを追加する場所
厚みを追加する場所は肩紐の付け根から肩前部分までです。
厚みを追加する場所を限定することで、背負った時に生じる肩紐の捻じれに影響を与えないので、背負った時にも違和感がありません。
また、わきの下やわき腹付近の厚みを抑えることで歩行時でも肩紐が邪魔になりません。
改良した芯材の形状
この肩紐構造によって肩紐の内側に集中していた荷重が肩紐の幅全体にかかるようになり、実際の荷重以上の重みを感じたり、肩紐が肩に食い込んで痛みを感じるなどの事象が軽減され、「肩の負担を軽くする」効果が得られています。
(参考:リュックの見直しプロジェクト「STEP9.特許取得のお知らせ」)
「肩の負担を軽くするリュックサック」はこの実感できる機能だけでなく、ポケットや収納部の使いやすさ・価格もお客さまに何度もリピートしていただけている理由の一つです。
また、お客さまからの声の中にはこんな声も多くいただいています。
荷物が多いタイプの人間なので、もう少し大きいサイズのリュックサックが欲しいです。
スーパーの買い物用にするにはちょっと小さいです。
機能もデザインも気に入っているけれど、女性用に一回り小さいサイズがあると嬉しい。
他に無印良品で売っているリュックサックも同じように肩の負担を軽くする機能をつけてほしい。
肩の負担を軽くするリュックサックを愛用していますが、通勤時にも使えて、ビジネスでお客様のところに訪問できるようなリュックサックもつくってほしいです。
こどものランドセルがとても重いので、こどもも使えるリュックサックが欲しいです。
リュックの見直しプロジェクトを始めた当時は、街中でリュックを背負っている人の多くが学生かビジネスマンでした。当時行ったアンケートでもリュックサックの所有率は50%程度で、所有者の中でも使用頻度は半数以上が「月1回・月1回以下」と回答していました。
(参考:リュックの見直しプロジェクト「STPE2.リュックについてのアンケ―ト」)
しかし、最近では2020年に始まったレジ袋の有料化や新型コロナウィルスによる影響からニューノーマルな生活が求められ、リュックを日常的に使う人が増えています。
“変わりゆく生活スタイルや使用用途に合わせてリュックサックも選びたい”というお客さまの気持ちに何とかこたえたい。そんな思いから、「肩の負担を軽くするリュックサック」のシリーズ化に向けてプロジェクトを立ち上げることにしました。
プロジェクトの対象となるリュックは3つ。
「肩の負担を軽くするリュックサック」は「肩にかかる負担」をリュックサックの構造に向き合って開発された商品です。最大の特徴である「肩の負担を軽くする」構造はデザインに影響することがありません。
そこで、今回のプロジェクトの対象となるリュックは現在無印良品で販売している3種類のデザインの異なるリュックを対象とすることにしました。
手提げとしても使える 撥水リュックサック・A4サイズ
リュック・ショルダー・手提げの3通りに使えます。
長さ調節ができる手提げをつけました。使わないときは収納できる仕様です。
容量(目安)は11リットルと小ぶりですが、A4ファイルが入る大きさです。
PC収納ポケット付撥水リュックにもなるバッグ
リュックの肩紐を背面に収納できる2WAYバッグです。
容量(目安)は13リットル
形がしっかりしていてブリーフバッグとしても使えるので、ビジネスにも使えます。
大きく開く 撥水リュックサック
開口部が大きく開き、中身が取り出しやすいリュックサック
容量(目安)22リットル
容量が大きいのでたっぷり収納できます。
プロジェクトを進めるにあたり、まず最初に「肩の負担を軽くするリュックサック」に並んで人気のある「手提げとしても使えるリュックサック」に「肩の負担を軽くするリュックサック」と同じ構造の肩紐を取り付けた試作品を作製して背負ってみました。
しかし、背負った感じは現行品とあまり変わりません。
「肩の負担を軽くするリュックサック」は背負った時に肩に肩紐がフィットしているのを実感できるのですが、この試作品は肩にフィットしている実感がありません。
背負い姿を確認してみると、肩紐の外側が浮いていて、肩紐全体が肩に触れていないことが分かりました。
これでは、肩にフィットしてる実感がないのは当然です。
「肩の負担を軽くする」リュックサックは、肩紐の内側に集中していた荷重を肩紐幅全体で分散させることで肩への負担を軽くしています。
つまり、【肩紐幅全体が肩にフィットしていること】が大事なポイントです。
どうやら、「肩の負担を軽くするリュックサック」と同じ効果を得るためには、これら3つのリュックに合わせた調整が必要なようです。
次回は開発の様子をご紹介します。
STEP2.「肩の負担を軽くするリュックサック」シリーズ化に向けて
「肩の負担を軽くするリュックサック」のポイントは【肩紐幅全体が肩にフィットしていること】。
無印良品オリジナルの肩紐構造は肩にフィットしやすくなる構造なので、もちろん基本的な構造はそのままで、肩紐の芯材の長さや内側と外側の厚み、肩紐の取り付け方などを見直すことにしました。
今回シリーズ化の対象となるリュックは3種類。
想定している使用対象者はこどもから大人まで身体の大きさも様々です。
通常の開発方法では目指す効果を得るために、【試作】→【評価】→【修正・再試作】→【再評価】→ ……と何度も何度もこの作業を繰り返し行うため、開発にはとても多くの時間を費やします。
さらに今回対象のリュックは3種類。
それぞれのリュックで試作を行い、評価もこどもから大人までさまざまな身体の大きさで行うと、商品化には相当な時間がかかってしまいます。
そこで、今回は3つのリュックに共通している「肩紐を肩にフィットさせるために必要な設計要素」を見つける方法で開発を進めることにしました。
まずは「肩紐を肩にフィットさせるために必要な設計要素」を決定し、各設計要素が肩紐を肩にフィットさせるのにどのくらい影響しているのかを見つけるための試作を行い、各設計要素の影響度を調べます。
最も効果的だと予想していた設計要素も、この方法で調べてみると実は他の設計要素のほうが効果的だったりするので、重要な作業です。
その結果から、「肩紐が肩にフィットする」ための設計条件を決定し、狙い取りの効果があるかどうかを確認しました。
もう1つ。
リュックで重要なのは「背負い心地」です。
肩にとてもフィットするような設計条件だからといって、リュックとしての背負い心地が良いとは限りません。
そこで、肩へのフィット度合いが同じくらいになるような設計のリュックをいくつか試作し、その中から
・肩にかかる平均圧力
・肩へのフィット感
・背負い心地
・デザイン
・工場のつくりやすさ
・コスト
などの要素から総合的に判断することにしました。
こうして出来上がったリュックを担当者で背負ってみたところ、肩にフィットしているのを感じます。
背負い心地もよくて、肩にもフィットしているので、なかなかよさそうです。
しかし、「手提げとしても使えるリュックサック」はこどもも対象のリュックサックです。
大人だけでなく、こどもが背負っても同じように肩にフィットしていなければ意味がありません。
こどもが背負った時はどうでしょうか?
従来の肩紐 改良品
※110サイズマネキン着用時
こどもが背負った時も肩紐が肩にしっかりとフィットしていてよさそうです。
では、肩にかかる荷重はどのようになっているでしょうか?
20代女性の平均寸法ダミーを用いた圧力分布測定の結果をご紹介します。
手提げとしても使える 撥水リュックサック・A4サイズ
従来の肩紐 改良品
PC収納ポケット付撥水リュックにもなるバッグ
従来の肩紐 改良品
大きく開く 撥水リュックサック
従来の肩紐 改良品
どのリュックも肩紐の内側に集中していた荷重が肩紐幅全体に分散しています。
ついに「肩の負担を軽くする」リュックサックシリーズの誕生です。
「肩の負担を軽くするリュックサック」はこれまでの形だけでなく、いろいろな大きさや形が加わり、シリーズ化することができました。
どのリュックサックも肩紐幅全体で荷重を分散することができる、自信をもって皆様にお勧めできる「肩の負担を軽くする」リュックサックです。
今回もたくさんの試作にご協力いただいた工場の方皆様、ありがとうございました。
次回は「肩の負担を軽くする」リュックサックシリーズの商品たちを紹介します。
STEP3.シリーズ化のお知らせ
ついに無印良品オリジナルの肩紐を用いた「肩の負担を軽くするリュックサックシリーズ」が誕生しました。
既にお店やネットストアでは一部販売を開始している商品もありますが、改めてシリーズ化した商品のラインナップと特徴をご紹介いたします。
商品名 | 肩の負担を軽くする 撥水 手提げ付きリュックサック ・A4サイズ |
肩の負担を軽くする 撥水 大きく開くリュックサック |
肩の負担を軽くする 撥水 リュックにもなるブリーフバッグ |
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商品画像 | ![]() |
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色※ | 黒・グレー・ネイビー・グリーン | 黒・ネイビー | 黒・ネイビー |
サイズ | 縦35×26×マチ13cm | 縦50×横30×マチ18cm | 縦30×横41×マチ14cm |
目安容量 | 11リットル | 22リットル | 13リットル |
特徴 | ・肩の負担を軽くする構造の肩紐を採用 ・手提げとしても肩掛けとしても使える3WAY タイプ ・PCポケット付 |
・肩の負担を軽くする構造の肩紐を採用 ・口が大きく開く ・PCポケット付 |
・肩の負担を軽くする構造の肩紐を採用 ・ビジネスにも使える ・肩紐をしまえる2WAYタイプ ・PCポケット付 |
商品名 | 肩の負担を軽くする 撥水 手提げ付きリュックサック ・A4サイズ |
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商品画像 | ![]() |
色※ | 黒・グレー・ネイビー・グリーン |
サイズ | 縦35×26×マチ13cm |
目安容量 | 11リットル |
特徴 | ・肩の負担を軽くする構造の肩紐を採用 ・手提げとしても肩掛けとしても使える3WAY タイプ ・PCポケット付 |
商品名 | 肩の負担を軽くする 撥水 大きく開くリュックサック |
---|---|
商品画像 | ![]() |
色※ | 黒・ネイビー |
サイズ | 縦50×横30×マチ18cm |
目安容量 | 22リットル |
特徴 | ・肩の負担を軽くする構造の肩紐を採用 ・口が大きく開く ・PCポケット付 |
商品名 | 肩の負担を軽くする 撥水 リュックにもなるブリーフバッグ |
---|---|
商品画像 | ![]() |
色※ | 黒・ネイビー |
サイズ | 縦30×横41×マチ14cm |
目安容量 | 13リットル |
特徴 | ・肩の負担を軽くする構造の肩紐を採用 ・ビジネスにも使える ・肩紐をしまえる2WAYタイプ ・PCポケット付 |
※2021年6月現在(色は時期により変更することがあります)
肩の負担を軽くするリュックサックシリーズの特徴
芯材の厚み
背負った時に肩紐が内側も外側も肩から浮かないよう、外側に厚みを追加しました。
荷物が重くなるほど肩紐の内側に集中していた荷重が肩紐の内側と外側で分散できるようになりました。
厚みを追加する場所
厚みを追加する場所は、肩紐の付け根から肩前部分まで。
厚みを追加する場所を限定することで、背負った時に生じる肩紐の捻じれに影響を与えないので、背負った時に違和感がありません。
また、脇の下や脇腹付近の厚みを抑えることで歩行時でも肩紐が邪魔になりません。
肩紐の取り付け方※収納部が四角い形状のリュックサックのみ
収納部が四角いデザインのリュックサックは楕円形のデザインのリュックと比べて肩紐の外側が外向きに引っ張られやすくなるため、肩紐の外側が引っ張られないように縫い目を加えました。
肩紐の外側を肩に近づけているため、より肩紐が肩にフィットするようになりました。
「肩の負担を軽くする」リュックサックシリーズは、どれも肩紐が肩にフィットするのを実感いただける、自信をもって皆さまにお勧めできるリュックサックです。
新しい仲間が増え、新しい生活様式にも合わせて使いやすいラインナップになっています。
あなたはどのように使いますか?
まだ「肩の負担を軽くするリュックサック」を使ったことがない人も、これまでに愛用してくださっていた人も、ぜひ新しく「肩の負担を軽くする」リュックサックに仲間入りしたリュックサックでも、他にはない背負い心地を試していただけたらと思います。
ニューノーマルな生活で、新しい生活スタイルに合わせてリュックサックを使い分けてみてください。
最後まで連載を読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
そして、評価にご協力いただきました皆さん、たくさんの試作にご協力くださった工場の皆さん、本当にありがとうございました。